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PERFECT DAYSのryoのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
 役所広司演じる平山の生活を淡々と描いているだけなのに、見ていて妙に心地よかった。それは、彼の生活がリズム よく、心に余裕があるからだと思う。仕事が夕方までに終わり、銭湯で汗を流した後は浅草駅の居酒屋で一杯やる。帰宅してからは小説を読み、明日に備えて早めに寝る。支度をして家を出る度に、空を見上げて微笑んで車に乗り込んで仕事に向かう。平日はこの繰り返し。翻って私の生活といえば、朝ギリギリまで寝て、夜遅くに帰ってきて飯食って寝て、の繰り返し。少し平山の生活をうらやましいと思った。

 ただ、あるシーンで姪に「僕とママは住む世界が違う」と言っていたように、平山は自分の家族とほぼ縁が切れているのだろう、世間からある程度距離を置いているからこそ成り立っている生活でもあるのだと思う。実は彼はトイレ掃除の仕事をする前は、世間的にも有名な大きい会社に勤めていたのかな、とも思った(実際には語られていないけど)。

 平山は、仕事の休憩時間にいつも職場の近くの神社でカメラを構えている。木々から一瞬差す、木漏れ日を写真に納めるために。また、この映画の最後ではニーナシモンの「feeling good」が流れる。

it's a new dawn, it's a new day, it's a new life for me, and I'm feeling good
(夜が明け、新しい1日が、そして新しい人生が始まる。私は最高の気分だ。)

冒頭で平山のリズムよい生活が心地よいと書いたが、彼は機械的にルーティンをこなすような生活を送っているわけではない。日々、些細な一瞬を大事にして生きている。同じ1日は決してなく、また始まる新しい1日に高揚感を覚える。生きるとはこういうことなのかもなと思えた映画だった。



  
 
 
 
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