紫音

PERFECT DAYSの紫音のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.9
規則正しく寝起きし、植物を愛で、仕事は誠実にこなし、昼休みにはカメラで写真を撮り、仕事が終われば銭湯の温かな湯船に浸かり、好きな酒を飲み、好きな本を読み、好きな音楽を聴く。

平山という男は、そうやって毎日を生きている。

それは今流行りの「丁寧な暮らし」をもどこか超越した、ミニマルで、潔くて、清廉な日々。

だけど彼は決して世捨て人ではない。
嬉しい事があれば微笑むし、腹の立つ事があればちゃんと怒る。
辛く苦い過去の記憶だってある。
それでも彼は人を憎んだりはしない。
人を好み、出会いを尊び、今を愛している。

「こんなふうに 生きていけたなら」

本当に、この一文に尽きる映画だ。

名優・役所広司の巧みさ、しなやかさ、その存在感の稀有さ。
こんなにも素晴らしい俳優が居る事は、日本の誇り以外の何物でもないと思った。

そして選び抜かれた洋楽ロックたちの燦然とした輝きよ。

それらに触れられるというだけでも、充分に観る価値のある一本だと思う。

ありがとう、ヴィム・ベンダース。
紫音

紫音