うえびん

PERFECT DAYSのうえびんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8
トウキョウ お天道様の詩

2023年 ヴィム・ヴェンダース監督作品

早朝、掃き掃除の音で目を覚ます
顔を洗い、歯を磨き、ヒゲを整える

植物に水を遣り、着替える

玄関に並べられた携行品
置かれたままの腕時計が気にかかる

缶コーヒーを買い
車に乗り込み

カセットテープからBGMが流れる

一日の始まりと物語の始まり
冒頭から一気に作品世界に引きずり込まれる

ドイツ人監督が描く
東京と日本人

外から見た“日本”が
浮かび上がるようで興味深かった

主人公の平山
言葉数が少なく
仕事が丁寧で
所作が美しく
小さきものを愛でる姿が印象深い

ほぼ彼一人の物語

「今度は今度」
「今は今」

未来を語らず
今の現実に淡々と向き合う姿は
都会の俗世で修行する禅僧のよう

大好きなヴィム・ヴェンダース監督の
『ベルリン 天使の詩』が重なる

守護天使ダミエルは
天上から地上へ降り立った

平山は
地上から天を仰ぎ見た

両作のベクトルの違いが感じられる

前作は上から下へ
本作は下から上へ
螺旋上に昇ってゆくイメージが湧く

主人公を護るものも違う

人間ダミエルは天使カシエル
平山は木漏れ日

擬人化されたソレと自然のソレ

神様とお天道様

ベルリンとトウキョウ
ある時代、そこに生きた人

昔々、ヒラヤマも
ダミエルとカシエルと同じ
天使の仲間だったのかもしれない

「この世界は
本当はたくさんの世界がある」

私は今
どっちの世界を生きているんだろう
うえびん

うえびん