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PERFECT DAYSのnyasuke33のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
登場人物の背景を、台詞や情景から感じさせる作品。説明的でないところがいい。主人公が都内のトイレ掃除に従事するきっかけとか、家族関係など、知りたいことは山ほどあるが、ほとんど教えてくれない。予想もくつがえされる。たとえば幼い子がトイレに閉じこもっているところを見つけ、手を引いてあげる場面では、誤解を生むのでは?とハラハラしたが、見つけた母親は彼に見向きもしない。また、バックレた元同僚は本当に救いようがない奴、と思いきや、彼独特の長所が映し出される。誰に対しても優しい眼差しが、観る者の胸を打つ。

カセットテープ、高速道路、たくさんの文庫本…、昭和テイストが随所に盛り込まれる。本好きの自分が食いつきたくなる表紙のラインナップだ。洋楽には疎いが、懐かしいと思う人も多いだろう。

ルーティーンの中に、時々それを乱す者があらわれる、という設定が新鮮。波風があっても最終的にはまたルーティーンに戻る。紫色のスカイツリーと主人公の「植物ルーム」、夜も開けっ放しの窓、そして木漏れ日。鑑賞から1日たっても多くのシーンが脳裏に残っている。今彼はルーティーンのどこにいるのだろうか。幸せな気分にさせてくれる作品だった。
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