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PERFECT DAYSのrensaurusのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.6
儚い人生なのだから、自分の幸せを満たすことを第一にして穏やかに過ごしていてもいいじゃないの。ゆるやかに流れる時の中に、確かな実在感を覚える作品。

この作品ではカットと場面転換が効果的に使われていて、選りすぐりの音楽も、目を奪われる美しい光景も、ブツブツ切る。すぐ移り変わる。それ自体が無常な人生そのものを表しているようで、愛しくも寂しい。儚い。

平山が眠りにつくと、その日焼き付けた光景がモノクロームで映される。感情が動いた時に見つめていた光景。木漏れ日、水面、人の顔、手。そしてまた次の日が始まる。今を楽しむ平山だからこそ、『今』が脳裏に刻まれていく。ルーティンがあるからこそ、一日一日の違いを具に見つけ、より一層輝く。

一人でひっそり暮らす反面、銭湯、居酒屋、古本屋など、多くの人が利用する公共的な空間に通うことが多く、厭世的であるように見えて、『社会の一員であること』を確認しているようで微笑ましい。

公衆トイレの清掃員であることに嫌悪感を持つ妹をよそに、いや、むしろ反骨心を抱えているように真っ直ぐにトイレを磨く姿には、自分自身を肯定しようという強い決意さえ感じる。道具を作って清掃に臨むほどのこだわりにも妙に引っかかる。何が彼をトイレに向かわせているのか。アルバイトが来なかった時にも結構な形相でキレていた。あ、田中泯みたいなホームレスだな、と思ったら本当に田中泯でした。
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