孤立と、孤独は違う。
平山は孤独ではある。
しかしこんなに質の良い孤独があるだろうか。
はっきり言ってファンタジーだ。同じように見えて同じ日はひとつもなく、整然としていることの気持ちよさが画面から滲み出る。「絆」なんて言葉からはかけ離れた、やんわりとした関わりが、毎日の風景にさざめいている。
東京の異世界譚。
トイレの清掃という、多くの人が「自分と違う」と思っている異世界。でもそこに住む人の心は、自分と同じように、あるいは自分以上に豊かかもしれない。
東京に住む者には、すぐそばに実在する異世界を。外の人には東京という遠くの異世界を、同時に見せるという高度な映画なのではないか。東京プロモーションとしてこれ以上ない作品。アングル、光、音楽。スキだらけのようで1ミリのスキもない映画。
役所広司という人は凄まじく、最後の顔のロングカットだけでも、一秒たりとも見逃せないという感じがあった。
