Fredisius

PERFECT DAYSのFredisiusのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

全体的な評価が凄く高いのと、私自身がカンヌ系の映画は相性がいいので、映画館で観ておきたいと思い、遅くはなってしまいましたが、観劇前の空き時間に鑑賞。

確かに良作だと思います。
ただ、ほかの方のレビューのように、美しい話、平山のような生き方がしたいとは素直に思えません。
これこそパーフェクトデイズ!ではなく、本当にこれがパーフェクトデイズなの?と問いかける作品に思えました。

私の意見としては、この作品はジョーカーやボーに近い闇が濃い作品です。
ボーはあからさまにその歪さをある意味分かりやすく表現してくれていますが、この作品は、監督の美しい絵作りや、ほのぼのとした単なる日常の繰り返し、役所広司の暖かな最高のお芝居というオブラートに包まれて、この映画の恐ろしさを覆い隠してしまっていると思います。

パーフェクトデイズだったのは本当に最初の一日だけ。
彼が諦めと日々の些細な変化に見出す幸せに多い隠されたその影の部分をしっかり捉えたら、彼の中の偽りのパーフェクトがどんどん崩れていく話だと思いました。

特に私も感動しましたが最後のシーン。
役所広司のお芝居は本当に、さすがカンヌを取るだけあると心動かされました。

一方で、あれだけリアルな世界観の中(まぁちょこちょこ日本じゃこれはおこらなそうだよなー、やはりフィクションだよなーと思うシーンもあったりしましたが)であからさまに歪でリアリティの無いあのシーン……
まずハンドル裁きが、あのシーンおかしすぎるんです。日本の東京であんなに左右に振り回して運転するような道路がありますか?最初曲に合わせて手をノリよく動かしているだけかと思いきや、ハンドルもきちんと切ってるんですよ……

私はあのシーンを、平山の心の崩壊と見ています。パーフェクトだったルーティーンの中にここ数日で入り込んできた彼からしたら普段の幸せと思える些細な出来事とは別の、大きな変化や出来事。同僚からの独り身や仕事への疑念の言葉。姉の態度と問いかけ。姪っ子からの悪意無い問いかけや提案。行きつけのママのところでの思わぬ出会う。それによって彼が諦め忘れてきた大きな影が、彼の心をどこか壊したのでは、と。
最後も彼の妄想や、悪く考えれば事故していたり、いつも通り仕事には行けてないのでは…?とか。

個人的にこの作品のテーマとして日常の些細な変化や、当たり前の幸せを素直に感じて感謝するというところは共感できますし、本当に大事だと思います。

だからといって、平山の生き方を単に肯定するのはとても危険だと思っていて、彼はもはやボーと同じくらい時の止まってしまっている人間なのであって。
なので日本のポスターの「こんなふうに生きられたら」というキャッチコピーはどうも私の中ではしっくり来ません🥲

「今度は今度、今は今」も個人的には全く刺さらず←

監督が描く、沢山の光の裏側に込められた影の部分をしっかりと拾わないと、と思う作品だと思います。

監督の技量、役者の技量において、そういう意味では本当に芸術性も音楽性も背景も深くよくできた作品だと思いました。
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