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PERFECT DAYSのayacchiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
生活それ自体がマインドフルネス(瞑想)のようでした「今、ここ」を大事に生きる
ただそれだけの事が現代は難しい。

せわしく生きる毎日の中で心がささくれてしまうことがある。理想論だけでは上手くいかない現実がある。

だから、他人に踏み込まれすぎないように距離をとり自分の出来る範囲の事にただ集中する。

けれど寂しさもある。
日常を慈しむことに心の平穏や充足感を見い出している姿は美しくも見えるが、自分はこれで良いと噛み締めているような儚さも感じた。

この映画が心に響く人が多いのは
情報にさらされ続け、知らず知らずのうちに他者と比較してしまいやすい現代だから。自分と他人との境界が不明瞭になってしまう苦しみを感じている人がきっと多いからなのかなと私は思う。

でも、どの人もそれぞれ懸命に生きる愛おしさをもっていると思った。子育てに追われる母親や、二日酔い?のサラリーマン。たかしを気にいるダウン症の男の子。ホームレス。

平山は言う、繋がっているように見えて世界は繋がっていない。と、ダイバーシティと言うけれど共存するには、相手と自分を線引きしないと他者も自分も見えなくなり、尊重出来なくなってしまう、私はそう思った。そんな事を脳内ぐるぐるして見ていた。

けれど、中盤でニコという純粋さに触れた時、心がほどけていく経験をして蓋をしていた自分の中の寂しさに気がついた。
ニコが平山を抱きしめた時、私も泣いてしまった。そしたら平山も泣いていた。

この映画の旨味を咀嚼しきるほどの厚みが私にはまだないが、母が映画を見てきて再婚するならこんな人と生きたいなといっていた。それは分かる気がした。

人や風、緑や空、その瞬間にしか出会えない木漏れ日。
一期一会にありがたいと感じられる心の余裕が日々を愛おしく、今あるものに目を向け、気づきを与えperfectにしていくのかな。どれだけ便利な物に溢れても人は満たされないもんね。
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