Kiwi

PERFECT DAYSのKiwiのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

世間で下に見られがちな仕事、警備とか掃除とか。
でも、ちょっと話をしてみると実はフランス語堪能だったり専門的なスキルがあったり資産家の子息だったり…。実家が新興宗教で自分はレズビアンで発達障害なので絶縁状態、と言う人もいた。

平山の仕事ぶり、暮らしぶりは端正で気持ちがいい。育ちの良さを感じる。小さな木をたくさん育てている。フィルムカメラで写真を撮るのも、ささやかな趣味。カセットテープの音楽のセンスもいい。読んでいる本のセンスもいい!だれにでも、どこでも、きちんと挨拶する。なじみの店で声を掛けてもらえる。迷子にも、ダメンズにも、訳あり女子にも、つい優しくしてしまう。

やっぱり、そうなんだな。父には、たとえ認知症になった父であっても、会うことはできない。妹を抱き寄せるシーン、その後のシークエンスには何とも切なくなった。それでも毎日はパーフェクトに流れてゆく。いつか踊るホームレスのようになるかもしれないと感じつつ。

平山の撮る木々の写真はヴェンダース監督の見た木々でもあり、どのシーンも(トイレのシーンまでもが)美しい。「ベルリン・天使の詩」ならぬ「トーキョー・トイレの詩」。石川さゆりの歌はうますぎて笑ってしまったけれど(もうちょっと素人っぽく歌えなかったのか?)、終盤、大の大人が本気で影踏みするのも良かった。

ラストの平山の表情のクローズアップ。役所広司の主演男優賞は100人いたら100人が納得するに違いない。

街を、人生を、人生を形づくる日々の営みを、じっくり感じさせてもらった。平山の泣き笑いをずっと胸に抱いて、明日もがんばろう。
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