べじ

PERFECT DAYSのべじのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.7
すごくいい映画だった。
だからこそずっと悶々としてる。
なんだか、私が生まれて20年少しの中で必死に組み立ててきた「幸福に対する価値観」みたいなものがあっけなくバラバラに崩れてしまった気がする。

ヒラヤマはこんなにも人間らしいのにどこか人間じゃない。
トイレを丹念に掃除するのに自分がトイレに行くシーンは1度もない。
酒は飲むが自炊をしないしご飯を食べるシーンもほとんどない。
食べるは生きる。だからヒラヤマにはどこか実体を感じない。
ヒラヤマの感性を通して見る世界はこんなに美しくても、ずっと外側で何かが起こってる不穏さを感じる。

だからラストシーンを見て少し安心した。
どれだけ上手く生きられていても寂しさや虚しさは消えない。もうどうにもならないところまできてしまったというような表情に、やっと純粋な人間味を感じた気がする。

情報消費をすることでしか生きれない私達からすればヒラヤマの生活は羨ましいもので、同時に到底たどり着くことの出来ない境地な気もしてくる。
東京のトイレはあんなに綺麗じゃないし、世界はそんなに優しくない。
ヒラヤマのような生活が理想とされる世界は正直怖い。

あれはヒラヤマにとってのPerfect daysだから。世捨て人同然の彼の生活をロールモデルにするんじゃなくて、私は私の幸せを見つけること。
嫌な事は嫌なままでいいし、誰かに言われるがまま全てを幸せに感じようとしなくていい。それが人間らしさだから。

生活の中の機微に時々幸せを見つけること
微笑みを携えて生きること
べじ

べじ