このレビューはネタバレを含みます
久しぶりに刺さる映画に出会えた。
観てから少し時間が経ってしまったけど、観た後の余韻が心地よく、できるだけ感じた事を言葉で残しておきたかったので書き留めておく。
繰り返しの日々。でも些細な変化が毎日起きていて、そこは映画を観ている私たちの日常となんら変わらないはずなのに、主人公の生活はどうしようもなく愛おしく、美しく描かれていた。
なんなら自分より質素に、言ってしまえば羨ましいとは言えない環境で暮らしているけれど、ひとつひとつの出来事をすごく愛おしそうに、大切に、楽しみながら過ごしている姿にとても憧れてしまった。
暮らしで関わる人との距離感も素敵だった。
行きつけの飲食店や本屋さん、顔は合わせるし軽い挨拶はするけどそれ以上でも以下でもない。他者の生活に深入りしないながらも、定期的に顔を合わせる事の安心感というか、一瞬の接点が互いのルーティンになっている感じに温かさを感じた。
また、誰しも他者には見せない側面があって、みんな何かを抱えながら暮らしているということ。良くも悪くも、誰かと接する時、その人物のほんの一部しか見えていないということ。
映画の中でも直接的には描かれないが、主人公の過去に何かあったことがうかがえるシーンがあった。でも、それこそが私たちが暮らしている日常で、映画で敢えて描かないことによって観ている自分の暮らしを省みるというか。知った気になっていないか。何も知らない、知り得ないんだと気付かせてくれた。
自分の中にある小さな幸せを大事にしながら暮らしている主人公の姿を見ていると、全部自分次第なのだと思った。
主人公の平山は幸せを見つけるのが上手。
暮らしているとちょっと嫌なことがあったり良いことがあったりするけど、小さな幸せを見つけた時自分がどう受け取るか、どう行動するかで生活の豊かさは変わるのだと思った。
美化されていると言われてしまえばそれまでなんだけど、小さな気付きと、自分たちの暮らしを少しだけ豊かにするヒントがたくさん詰まった映画だと感じた。
久々に、心から観て良かったと思えた映画でした。
