怡然じらく

PERFECT DAYSの怡然じらくのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

変わらない日常の中に微かな変化を見つけ、自分の世界を彩る主人公。
ガラケーを持ち、家にはテレビもパソコンもなく、棚はカセットと文庫本でぱんぱん。
彼は彼を喜ばせるものを、自分で見つけている。

現代人の世界は情報が洪水のようにあふれ、みんな溺れている。溺れながら、流れてきた浮き輪を見つけてはそれに掴まり、ハリボテの快楽の上で息つぎをする。
彼はそんな忙しなさから降り、ひとり優雅に微笑む。
ひたすら無口だけど、愛らしさと気遣いの心が垣間見える。

そして、妹の台詞からほんの少しだけにじむ彼の過去。
そこから、淡々とした日々に幸せを感じていることは確かだが、どこか人生に怯えているようにも見えてくる。
彼の隅々まで習慣化された日常は美しいんだけど、その中に自分を閉じ込めている感じ。同じ日々を繰り返すことで一生を埋めきろうとしている。

「今」を生きているときは平気なんだけど、たまに自分の作った檻の中に自分が入っている姿を鮮明に捉えてしまう時がある。檻は自分を守り、同時に自分を閉じ込める。そのむなしさやら、諦めた夢への未練、人生のどうしようもなさ、そういうのをひっくるめた最後の涙なのかなと感じた。

毎朝ほうきをはくおじさん。
公園でひとり昼ごはんを食べるOL。
助っ人できた掃除のおばさん。
全員に一日があり、一生があり、目を背けたい過去がある。そのことを心の片隅に。
怡然じらく

怡然じらく