しゃけ造

PERFECT DAYSのしゃけ造のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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役所広司という俳優に、全幅の信頼を寄せて描かれた作品。無口な主人公の日常を、徹底的に描き切ることができたのは役所広司のおかげ。
この作品では、影が大きなテーマになっていたが、影にかぎらずありとあらゆる「曖昧なもの」を、主人公に対する鏡として使っている。影はもとより、鏡の反射、レンズのピンボケなど、曖昧なものを主人公や人物に見せようとする工夫がある。また、話の展開としても、ルーティーンの中で関わる他者を通じて、主人公の背景を表している。他者に関する語りを通して、主人公の人となりを描いているのである。最初は気づかなかったが、木漏れ日の影を通しての本体(役所広司)の語りは、ずっと続いていた。
この話は、特に際立った事件が起こるわけでもなく、主人公の日常を淡々と描くだけである。彼の固定化されたパーフェクトデイはこれまでも続いて来ただろうし、これからも続いていくだろう。しかし、そのルーティーンのなかで、他者と関わり合い、少しづつ主人公は変化を起こし、未来へとつながっていく。そのような平凡な人生のあり方をドラマ的に描き切った点で、この映画は素晴らしいものがあると思う。
総括。いい映画。