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PERFECT DAYSのmplaceのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
2.9
映像美と挿入される音楽のセンスの良さ、そして役所広司の演技の素晴らしさのお陰で成り立っている映画のように私には見えました。

Wendersが好きな東京の風景や日本人の仕草、振る舞いが一通り紹介されているような作品なので、かねてからのWim Wendersの映画のファンとしては嬉しい反面、内容そのものが概ね薄いように思いました。

変わり映えのない日常が繰り返されるお陰で、普通だったら見過ごしてしまうような小さな変化や出来事がカタルシスを呼び起こし、清貧的な生活の中でたまに許される小さな贅沢が妙に愛おしく感じられる良さは理解できましたが、平山が掃除をしに行く公衆トイレ全てがThe Tokyo Toiletプロジェクトのスタイリッシュで綺麗なトイレばかりなので現実味が無く、そのせいでここで描こうとしている清貧さそのものが嘘くさく感じられてしまったというのが正直な感想です。

この方向性(平凡で変わり映えのない清貧的な日常に日々現れる僅かな変化)であれば、トーマス・ステューバー監督の「希望の灯り」(原語タイトル:In den Gängen)の方が自然で、よっぽど説得力があったように思います。

ただ、The Tokyo Toiletを使用した短編映画制作の企画が持ち上がったのがきっかけで結果的にこの映画が作られたそうなので、監督としては与えられた条件の中で監督の持ち味を最大限に生かした作品を作ったのだと思います。
できればこのような企画発信ではない形で、Wenders監督の日本を舞台にした作品をまた見てみたいと思いました。
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