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PERFECT DAYSのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

東京のトイレがスタイリッシュすぎて、鑑賞中謎の寂しさがずっと心にあるんだけど、平山の素朴な生活がバランスを整えてくれる感じ。見ず知らずの人とやり取りしていた○×ゲームは、一昔前だったら壁に直書きだったろうなとか考えた。
あと、役所広司だからなのか、役所広司が演じているからより一層そう感じるのか、周囲の女たちがみな平山をちょっと好きな感じ。でもその気持ち、わからんでもない。そっとお互いの距離を大切にしてくれる感じ、さりげなくずっと思いやりがある感じ、なんでも真面目に大切にする人だからみんなちょっと信用していて好きなんだろうなと思う。

なぜ突然甥っ子のチャリが出てきた?とか平山の家だけムーディーなライティングとか、「外国人が撮る日本」っぽかったり、ツッコミどころのあるファンタジーさも所々あったけど、そこはご愛嬌。

「ちょっと思い出しただけ」でヴィムベンダースのオマージュを混じえていた松井大吾監督とか、サブカルっぽいキャスティングだったり、ママどころかプロの石川さゆりが混入してる感じとか、キャスティングがウケた。面白かった。アオイヤマダって思ってたよりも画面映えする。田中都子さんの異様な存在感。

しっかりBOSS飲んでるのとか、そもそものこのトイレの企画とか、おじさんが絡んだ業界事情が匂うところもあるんだけど、役所広司の存在とヴィムベンダースの切り取り力が素敵な映画だった。

同じことを繰り返してるんだけど、同じ日はなくて、人は1人では生きていけなくて、人と関わる以上同じ日なんて一瞬もなくて。
それを平山は大切に噛み締め抱きしめていて、そんな平山を見ていると私も影響されて日々を抱きしめたくなる。生きているということが、尊くて愛しくなる。この日々を噛み締めたい思いは、平山しかり役所広司でなければ、ここまでの気持ちにならなかったと思う。

日々の生活に追われていると、平山のように小さなことに気づいて感謝したり噛み締めたり抱きしめることができなくなる。なんでできないんだろう。余裕がないからなのか。こんなにも小さな特別や大切に囲まれているのに。
クライマックスの平山の表情は、毎日の自分の暮らしを噛み締められていることへの実感と感謝が入り混じった多幸感のある涙に思えた。その感情を感じられている平山を羨ましいと思わずにいられない。
ヴィムベンダースがインタビューで答えていた「これが必要だと社会に信じ込まされているものよりも、本当に自分を満足させてくれるものについて考えるべきです。」というこの感覚が、これからもっと世間の感覚として重要視されていきそう。

ー Sunshine freeze leaves producing a game of light,on the wall on ceiling.
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