manami

PERFECT DAYSのmanamiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
-
変わらないような日々だけど、変わらないものなどなく、でも最近はその些細な変化に気がつかずと不安になる。学生の頃は訳もなく軽率に自分の存在を消したくなったりしたものだけど、社会人になり物理的に精神的に忙殺される日々にそんなことを考えるのすら煩わしくなっていてハッとする。映画館で隣のおじいさん2人が言葉を交わしあっていた。僕もおんなじ仕事をしているんですよ、彼を見ていると前を向こうと、希望を持とうと思えます、と(上映中だがまあまあのデカボイスで)話していた。こんなことをしていても何にもならない、誰も見ていない、と思うのだと。それでも、いまの自分がいるのはきっとさまざまな取捨選択の末に辿り着いた場所で、この映画を観たのも、前を向うと思ったのも、全ては自分で選び取ったこと。点と点が線でつながり、後ろを振り返れば自分の歩みを確かに感じる。自分でもコントロールができないくらいに自分のことを愛せる自分と愛せない自分がせめぎ合っていて、つよく生きていかなきゃという気持ちばかりが先走りしている。
スカイツリーの麓の下町と、モダンなお手洗いのコントラストが、地続きの暮らしと社会との接点の鮮明な差のよう。映画館を出てすぐ元日のよく晴れた空とスカイツリーが見えてそれだけで嬉しかった。家族と電話をして、離れていてもお互いのことをいつも思っている。ひとり誰もいない神社でみんなが幸せでありますようにと祈る。
manami

manami