朔

PERFECT DAYSの朔のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
「何も変わんないなんてそんな馬鹿な話ないですよ。」
ことばはすくなく、つよくもなく、おもくもなく、だからこそ、心にじんわりと浸透するおもいがある。
この映画を観終わって、瞬きを一つして。そうしたら、目に映る世界が、ほんのすこし、変わったような心地がした。
変化はこわいが、それはおもしろくて、それはいとおしい、そのぶんだけ、私はそれが、こわくてしかたない。だからこそ。
なんでもない日々のどうしようもない変化のなかで、かすかな命の営みを見つけ(もしくは見つめ)て生きるその姿が、しずかな心の動きにそっと寄り添うその表情が、私にはまるで、やわらかいひかりのように見えた。
木漏れ日。
光があれば、影がある。そのどちらが欠けても、世界は成り立たず、この世の美しさというのは、そうして出来たのだろうと思う。
かなしみもよろこびも、なにもかもは表裏一体。笑うように泣き、泣くように笑う、ラストシーンは本当に圧巻。
役所広司、あまりにも素晴らしい役者である。
アオイヤマダの稀有な存在感に、どうしようもない愛おしさを思う。中野有紗の存在は、希望だ、その存在に、私は未来を見る。
「今度は今度。今は今。」
朔