ビーバーくん

PERFECT DAYSのビーバーくんのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

大変素晴らしかった、大好きな映画だ。

めちゃくちゃシンプルだし、淡々と進む物語なのに、あまりに深い。
一見何も起こらないようで、人が出てくるたびに波が起こり、そしてあの、最後に泣き笑うシーンね。
嗚呼、人生とは、、!
という。

彼はね、幸せそうなんですよ。
「仕方なくその生活をしている」みたいな感じが全然なくて、自ら選んでいる。
テレビはないし、ネットもみない、スマホもない。
現代の情報を享受することはないけれど、乱されることもない。現代において、それも大都会において、彼の時間はゆっくり流れていて、静かで、穏やかなわけです。

特別何か手に入れることはないけれど、自分の生活に満足し、渇望していないというのは、ある意味非常に豊か。
対照として象徴的なのが妹さんね。
我々の大多数はそちら側なのかもしれないけれど。価値観的に。

で、毎日が繰り返しのように見えて、"常に新しく出会っている"というところが素敵なのです。
あんな風に生きられたら、とすら思ってしまう。
毎朝目が覚めた時の窓ガラスの感じとか、仕事の手を止めたふとした瞬間の木漏れ日に、喜びと感謝のような気持ちを抱く。
いやわかるよ。アチキもね、木漏れ日に限らず、部屋の中に光の角度がちょうどキて、アッ、いいなぁ、とかあるよ。あるよね?
この映画観てからその回数が増えたよ。写真も撮ったりして。(スマホだけど)
でもそれがたまたま気付くもの、というのを超えて、すごく大切にしてされているわけです。なんかまじでこれは生き方。

こういうのが「もののあはれ」というやつなのかもしれない。
最後のニーナシモンの歌詞とか、ママが言ってた「どうしてずっとこのままじゃいられないのかねえ」的なこととかもそうだけれど、
今この瞬間にしかない、複製不可能な、それゆえに心をとらえるもの、の大切さよ。

今は欲望欲望!効率効率!の資本主義に飲まれて日々あくせくお金を稼いでは、欲しいものを手に入れて、でも満たされることなくさらに求めて、みたいな感じだし、SNSの繋がり不安、分断です。
木漏れ日も忙しい人の目には入らないよ。

よりよく生きることとは何か、とか
満たされた生き方とはどういうものか、
という問いを投げかけてくれたし、
心から賛同するものがありましたナ

ビーバーくんさんの鑑賞した映画