近本光司

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命の近本光司のレビュー・感想・評価

4.0
1858年、ボローニャに暮らすユダヤ人の大家族の6歳の少年がローマ教皇の勅令によって誘拐される。彼は生後間もない頃にカトリックの家政婦から秘密裡に洗礼を受けていたのだという。モルターナ事件として知られる本件は、統一国家の成立をめざす動乱のただなかにあったイタリアに微妙な陰を落とした。無神論者を自称するベロッキオは、八十歳を超えても変わらずキリスト教の信仰をめぐる問題を材に取って映画をつくりつづけている。どうしても音楽は冗長だが、嘘っぽさを感じるショットがほとんどない力強い演出の時代劇。1870年、ボローニャが落ちたときの幕開けのショットにはいたく感動を憶えた。なにより少年のバチカンでの父母との面会。そして最後の生家で病に臥せる年老いた母との再会。都合3度描かれる親との再会は、いずれもエドゥアルドが胸中で何を考えているのかわからない、見事な緊張の持続! すばらしい。