けんいち

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のけんいちのレビュー・感想・評価

3.6
お前はお前が祈る神とは別の神によって祝福されている。
ある日、モルターラ家を黒い服の男が訪れ6歳のエドガルド少年にそう告げる。

ボローニャで商売を営むユダヤ教徒モルターラ家の息子エドガルドは本人も家族も知らないうちに洗礼を授けられ、キリスト教徒に変えられてしまったのだ。

こうしてエドガルド少年の奇妙な人生の旅路が始まる。

カトリック教会にほとんど拉致されるような状態で家族から引き離された少年は教会で暮らすことになるのだか、演じるエネア・サラくんがめっちゃ可愛い🤩
良い子にしていればすぐに家族と会えるとか適当なことを言われて健気に振る舞う少年が可哀想で泣かされます😢

エドガルド少年が自身の寄る辺ない境遇とイエス・キリスト像を重ね合わせる演出は上手いと思いました。
十字架の上で死に続ける痩せたユダヤ人の男に少年は不条理な自分の身の上を同一化させ、キリスト教の教義を受け容れていく。

だが映画はこの後、悪い意味で通俗的な展開を見せる。
ローマ教皇ピウス9世の分かりやすい戯画的な描き方が象徴的です。
エドガルドの人生をもっと深く掘り下げていたら、宗教と個人を巡る今日的でさらに感動的な作品になっていたと思うのですが、成長してからのエドガルドの描き方が中途半端な印象ですね。

キリスト教とユダヤ教。教会と家族に引き裂かれた彼の人生が、単に情緒不安定で何を考えているかよく分からない男みたいになってしまっていて残念です。

しかしエドガルド・モルターラさん、けっこう長生きされたんですね🙂