菩薩

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命の菩薩のレビュー・感想・評価

3.5
神が創りし人間と人間を統べる為のシステムとしての政治と宗教、その脆弱さと矛盾。ユダヤ人を崇めつつもユダヤ人を忌み嫌い蔑む、口実以上に意味を持たないうえで口実に縋り権力にしがみつく。刷り込みと徹底した反復、他の否定の上で完成されていくのが信仰であり、その信仰の先で破壊されていくのが人間らしさでもある。疑が入り込むうちはまだ引き返せるだろうが、それすら無くした先にあるのは決して天国などではない。手足のくびきから解かれ十字の束縛からも放たれ独り歩きをはじめるキリスト、信仰に溺れ割礼に怯える権威、引き倒され打ち捨てられそうして忘れ去られる。母の庇護からも「父」の庇護からも離れ、家族は完全に終焉を迎える。
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