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エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のleylaのレビュー・感想・評価

4.1
マルコ・ベロッキオ監督の集大成ともいえるような宗教問題の作品でした。荘厳な映像と音楽に没入できて劇場で観てよかった。

原題は「誘拐」。1858年にイタリアで実際に起きたカトリック教徒によるユダヤ人誘拐事件の映画化。スピルバーグが撮りたかったけど子役が見つからなかったことと、2つの宗教を描くことでアメリカ社会に与える影響を心配し、断念したそうです。

ユダヤ人のエドガルド・モルターラは赤ん坊の時に何者かによってカトリックの洗礼を受けてしまったため、6歳の時にカトリック教徒に連れて行かれしまう。一体誰が勝手に洗礼を?

両親は何とかして息子を連れ戻そうと抗議し、全世界で波紋を呼ぶ大騒動となる。やがて13年後、教皇領が廃止され自由になった時、エドガルドが選んだ道は…

人種や家族よりも宗教を重んじる。宗教で人が争う根幹を見た気がした。当時のカトリックの権力の大きさと強引さには驚くが、だからこそ巨大化した宗教なのかなと思えた。日本で今問題となっている宗教2世問題にも通じる。

家族と宗教の間でゆれるエドガルドの心の揺らぎが興味深く、もっと深く彼の心情を知りたい。

キリスト像からクギを抜くシーンが印象的だった。ユダヤ人であるキリストとエドガルドが重なる。あの瞬間からエドガルドは真のカトリック教徒になったのかもしれない。子役の演技が素晴らしかった。

母の死の間際でカトリックに改宗させようとするエドガルドと、ユダヤ教のまま死にたいと言う母とのシーンがこの作品を言い表していて、切なくむなしいシーンだった。

宗教とは、権力とは?を考えてしまう作品。サスペンスタッチで面白かった。
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