【料理を通した2人の愛】
※fans voice様のオンライン試写会での鑑賞
素晴らしい"美食映画"だった。
「パペットの晩餐会」など、世の中にはたくさんの美食映画の傑作があるが、本作もその中の一つに入るだろうなと感じた。
本作は特に突発とした動きがある映画ではないが、"ドダン(ブノワ・マジメル)"と"ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)"の"料理を通して交わされる愛"がとてつもなく美しくて良い。ドダンはなかなか"不器用"な男なのだが、物語が進むにつれてウージェニーへの想いが段々と強くなり、私たちにもより深く伝わるのが素晴らしかった。これは"トラン・アン・ユン"の作家性が見せた賜物だろう。
そしてなんと言っても料理が凄い美味そうで…。メインのポトフも良いのだが、本作に登場する"天才的な味覚"の少女:"ポーリーヌ"が涙が出るほど絶賛した"ノルウェー風オムレツ"がとても食べてみたくなった。料理監修に鬼才と呼ばれる料理人:"ピエール・ガニェール"が参加している事もあり、"洗練された料理のシーン"を劇中でも堪能する事ができた。
それに"自然光"や"生活音"を使った撮影方法も本作の雰囲気にマッチしていてとても良かった。音楽を極力廃しているからか、料理の風景や人々の会話も集中して見る事ができてとても心地よかった。自然光に関しては、前作の「エタニティ」でもそうだった。
素直に本当に良い美食映画だったなと感じた。全てがうまく調和して、これはどの世代でも馴染める内容になっていたなと感じた。
「食欲の秋」は、本公開時には明けてしまうが、何かこの時期は柔らかな映画が見たいなと感じた時には、本作を選んでみては如何だろうか?