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ポトフ 美食家と料理人の鹿のネタバレレビュー・内容・結末

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

予告から想像すると結構な割合でどこかの偉いさんを料理でもてなすのに他の人たちが凝ったものを出している中、あえてごまかしのきかないポトフで勝負をかける料理人の奮闘記、だと思う人がいるのではないだろうか。ぜんぜん、違います。うーん、なんでわざわざそう思わせるのだろうか。
それにしても異常である。「食欲」の行き着く先のある種の極北、とでも言うか……。常人にはうかがい知れない突き抜けた「美食の快楽」を貪欲に追求する世界。そんな世界を共有し、お互いがお互いを想い合う気持ちもすべて料理で表現するし、受けとめ、理解できる関係性なんて、「夫婦」の一言で説明できるものではないだろう。そしてその世界の未来まで一緒に見据えていたからこその、かたわれを失ってからも進んで行けるということ。主演の二人はかつての恋人同士であったということだが、ひとつの世界をつくりあげる俳優同士として、役に近い関係性をもち続けているのではないか、と思わせるような演技をみせる。もし自分がどちらかと交際しているとして(スミマセン)、この共演自体が、心穏やかではいられないだろうが、実際に観たら嫉妬のあまり二人ともぶつ切りにしてシチュー(ポトフとは、さすがに恥ずかしくて言えない……)にしてやる~~~、と思い詰めるくらい、誰にも代われない、精神的かつ肉体的に特別な関係を「食」で表現した濃厚な作品だと思った。
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