ねこみみ

ポトフ 美食家と料理人のねこみみのネタバレレビュー・内容・結末

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

美味しそうで映像が綺麗なんだろうな、くらいの期待値で行ったら華麗に大幅な期待値超えをしてきた!!

食べることは人生だ。
誰かの食べることを豊かにしたいと願い、ありったけの手間と時間をかけて作り出す料理は、愛そのもの。

あまりセリフもないままひたすら料理をするシーンが長尺で続くが、画が大変美しく見飽きない。
次はなにをするの?その料理にそこまでの手間をかけるの?わくわくがとまらない。

いつも最高の料理を作り出してくれるウージェニー。その料理を味わうことをこの上なく幸せに感じる美食家おじさん5人。その1人が、ウージェニーのパートナーでもあるドダン。

ドダンにとってウージェニーは人生になくてならない、かけがえのない愛おしい人。それはウージェニーにとっても同じ。だけど、ウージェニーにとっては「一緒に料理をし食べる」、それが続いていればすなわち「人生を共にしている」ことに他ならず、結婚にこだわらない。

そんなウージェニーが体調を崩した時の、ドダンのこの世の終わりのような反応、そしてウージェニーに元気になってほしいと願い、全身全霊で料理をする姿。そこにあまりにも愛が溢れていて、必死な料理シーンを見ていたら涙が止まらなくなってしまった。
あたたかくて、うつくしくて。

洋梨のシロップ漬けの中から、何を愛おしそうな手つきで形のいいものを選んでいるのかと思ったら、まさかのベッドに横たわるウージェニーに見立てたデザートだった。
この2人にとって、これ以上に相応しいプロポーズがあるだろうか…もう可愛らしくて愛おしくてめちゃくちゃ泣いた。

あらゆるシーンの画面がひたすらにうつくしい。
キッチン、調理器具、庭の野菜、食器、ロウソクの炎、結婚祝いの宴、ドレス、そしてもちろん料理の数々。
ずっと動く絵画を観ているようだった。

ドダンはきっと、ウージェニーが入れ込んでいたポーリーンとともに、また食という人生を歩んでいくんだろう。きっと娘みたいに不思議な絆になるのだろうな。

美食家たちが何かの小鳥の料理を布に隠れてフガフガ食べてるシーン、あまりにも楽しそうで最高だったw

結婚の宴の後と思われる回想シーンで、ウージェニーがドダンに「あなたにとって私は妻?料理人?」と問いかけ、ドダンははっきりと「料理人」と答える。
ウージェニーは心から満足そうに微笑み、ふたりは手を取り合う。
このシーンが、この映画の大切な部分を表していたと思う。
ウージェニーは、「料理人」から「妻」になってしまうのが嫌だったのかもしれないな。

もーほんとにいい作品でした。
食べること・料理・絵画・ヒューマンドラマのすべてが好きな人なら、きっと気に入る作品です。画家のタイプで言うと、ルノワール、フェルメール、モネあたり。
本当に出会えてよかった。
だけど、食と料理を心から愛している人で、かつ心の動きを読み取ることが苦手でない人でないと、この映画の本当の良さは伝わらないんじゃないかと思う。(説明が少ない作品なので)

※「ポトフ」という邦題はミスリード。ポトフをつくることは全くもって主題じゃないし、結局ポトフはできないし、ポトフを振る舞うところも描かれない。
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