Asino

落下の解剖学のAsinoのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
これは落ちた男とその妻の関係性を、裁判のかたちをとってじっくり「解剖」する話だ。
メスは次第に深部に分け入り、どろりとした臓物が顔を見せる。
でもはらわたまできれいな人などいないのと同じように、嫉妬や憎しみ、後悔や妥協と無縁な夫婦関係もないわけで。

面白かった、けど疲れた(苦笑)

息子のダニエル役のミロ・マシャド・グラネールと、彼の愛犬スヌープ(パルムドッグ賞受賞!納得!)の演技が素晴らしかった。
あと時々、話してる人を写さず、(目の不自由な)ダニエルにフォーカスして音声に集中させるようなカメラがよかったな。彼と一緒に耳を澄ます感じ。

主人公は「自分の人生」を作品にしてきた小説家だ。
夫の死をめぐる裁判で、断片的な事実をもとに自分と夫の関係について他人に決めつけれて苦しんだ彼女は、ある意味これまで自分がしてきたことを、逆の立場で経験させられた、ともいえるのかも。

英語とフランス語が半々くらいの映画なんだけど、ドイツ人である主人公がフランス語で裁判を受けなきゃいけない、そのもどかしさみたいなものまで含めてサンドラ・フラーの演技素晴らしかった。
あといつのまにかグレイヘアな感じのスワン・アルノー(弁護士役)。素敵でした。
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