TakayukiMonji

落下の解剖学のTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
ギャガ、エスクァイアジャパンの先行試写会参加。パルムドール受賞作で期待値も高かった作品。
サスペンスフルな予告編が印象的だったが、良い意味で予想を裏切られた。
法廷サスペンスの面白さ、真実が明かされていく展開から”家族”や”夫婦”の問題に焦点をあてていく人間ドラマとしても面白かった。このあたりがまさに”解剖”という感じで解き明かされていくのが見応えあった!事前に「ソルフェリーノの戦い」を観ておいてよかったかも。犬もポイント!
サンドラ・フラーの前半から後半までの繊細な演じ分けがなかなかすごかった!「関心領域」にも出てるし、今後注目したい人。




事前情報なしで観た方が断然面白いと思うので、以下ネタバレ。






長編デビュー作の「ソルフェリーノの戦い」と同様に、夫婦間の赤裸々な本音がぶつかり合うところがリアルで面白かった。
どちらも小説家である夫婦の仕事と家事と子育てのバランスは万国共通のテーマで、うちの家も例外ではなく、こんな言い争いは身に覚えありで背筋が伸びる。夫婦は赤の他人だから、子育てで意見の相違が現れるとか、血の繋がりがないからぶつかるとか言うけれど、、愛の形が変わり、遠慮がなくなるからこそストレートに怒ってしまったりするものだよな、と。この夫婦には尊厳は残っていたと思う。(サンドラの”彼は違う”のジェスチャー、ラストで弁護士と親密にヨリを戻さないあたりも冷静。)
この辺の夫婦間の赤裸々でいうと、「マリッジストーリー」や「ビフォアミッドナイト」も合わせて観て、夫婦とは子育てについて深めたいところ。
この辺のテーマは結婚と家族と向き合っている人の方がリアリティを持って抉られるところ。
家族の形、夫婦の形、人それぞれだけど、人間である以上、こんなにも共通のテーマがあり、議論が絶えない。エンタテインメントの面白さもありながら、しっかりフレンチ流のシニカルさが効いていて面白かった。

フランス語の“chute”とは、落下というよりも”脱落”であったり、”堕ちる”というニュアンス。死んでしまった夫の”人生の堕落”を法廷と人間ドラマを掛け合わせて、解放していく。まさに、落下の解剖学、というタイトルに偽りなし。
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