散歩

落下の解剖学の散歩のネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

事実と真実、客観と主観に願望を添えたような作品でした。裁判という形でストーリーが提示され、各人がそれを解釈しながら物語が進んでいく・・・ハズなのにお互いの超主観的な発言とその否定の応酬が重なるつれてどんどん事実が遠くなっていくような感じが今の日本のメディアの在り方やSNSでの暴露合戦なんかとも通じてリアルに感じたり、でもその事実が遠のいていく様子はものすごく分かりやすく整理されて観客に伝わるようになっているのが「上手いなぁ」って感心させられたりしました(セリフが恐ろしいほど多かったのに)。観る前からラストが曖昧になるんだろうなっていうのは予想出来ていたし劇中でもそのような事が示されてはいたんですが、事実が分からない中で色々と選び取ってあのラストに行き着いた瞬間に彼女の新作が出来上がったような、今作自体がそういうパッケージの中にあったのかなって思えたりもしてそこは今作ならではのエンタメ的な所だったのかなって感じられて面白かったです。ラストのダニエル君は母親の頭の匂いを嗅いでいるようにも見えましたが果たして何を感じたんでしょうか。そしてスヌープは何を知っているんでしょうか。こうして最後に今作の罠にまたハマって劇場を後にしました。しかしダニエル君もスヌープも演技が素晴らしくて可愛かったですねぇ。そしてあの検事(?)はホント憎たらしかったですね(フランス映画のイキったギャングによくいる顔だなぁって思いながら観てました)、って彼だって仕事としてやっているだけなのかも知れないのに、こうやって勝手に決めつけるのが良くないんだろうなぁ。
まあ、女性が成功してしまった夫婦の崩壊劇だったり有名人が丸裸にされて世間のオモチャになっていく話がイヤになるくらい詳細に描かれて、何というか『落下の解剖学』って夫の死因よりもこっちにしっくりくるタイトルだなって思ったりもして。あとは元々の国籍とか2か国語とか・・・観ていて孤立感とか夫婦の断絶が世界の在り方に繋がる感じはしたんですが果たしてどういう意味でそういう設定にしたのかはよく分からなかったりもして、ホント内容が濃い作品だったしシンドイけど説明を受けた後にまた観返したい作品でした。
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