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落下の解剖学のappleのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

脚本賞!
取るべき映画だと思っていたのでよかった

良い意味で裏切られた。
この映画では結果よりもそこに至るまでの過程や、"裁判"の本質にスポットが当てられている。
夫の死(落下)から、他者には見えない家族の姿や妻の人柄に裁判を通してメスが入っていく。そこで語られる事の真偽は誰にも分からず、ただ様々な憶測と真実と虚言を繋ぎ合わせたものだと感じた。
なので観客側も、彼等の発言に考えを左右させられ主観的な判断をせざるを得ない。
ダニエルが最後に母親に対する愛を選んだ事がこの映画の全てであり、真実はどうあれ最良の結果だった。
またこの映画では回想シーンはほとんどなく、過去のすべての出来事が本人達の口から語られている。回想シーンがあるとどうしても、観ている側は判断をそれに頼ってしまうが実際の裁判では、法廷に立つ人の発言のみが頼りなはずだ。回想がない事は彼等の言葉がより直接的に観客に伝えられるこの映画において重要なポイントだと思う。
口論と父親が息子に語りかけるシーンの回想については、あくまでも生活を録音されていたものと息子の証言なのでそれは確実な真実に辿り着けるものではない。
一つ凄いなと思った事で、裁判中サンドラが不慣れなフランス語で話していたところを英語に切り替えてから、彼女の言葉の表現力が広がり、息を吹き返したように本来の彼女が出てきて驚いた。俳優の計算された演技だと感じた。
総じて、脚本が素晴らしいし俳優も良い映画だった。

オープニングとエンディングがとても好きだった。おしゃれだね。
パンフレットも観た人にしかわからない作りになっていてデザインってすごいな〜と思いました。
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