うらぬす

落下の解剖学のうらぬすのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

法廷劇だから夫の死に関して判決こそ一応出るものの、観客に対しては紛れもない一つの真実を敢えて提示せず、曖昧な薄闇の中に隠してしまう。しかし人生とは得てしてそういうものである──作中で述べられていた通り、二つの選択肢の前で確信が得られずともいずれか一方を選んで進まなければならない──という真理を鋭く突いている。
夫婦の間に横たわる絶望的な深さの溝、家庭が崩壊してゆく様を生々しく描くヒューマンドラマとしても一級品だった。一癖も二癖もある妻を演じたザンドラ・ヒュラーから漂う、多かれ少なかれ人間の心に潜む暗い情念のオーラのようなものが、題材に相応しい重苦しさをこの映画に与えていたような気がする。