他殺か自殺かが話のおおすじではあるが映画の根本はもっと複雑で、重厚なヒューマンドラマ。
夫婦喧嘩の音声がすごくリアルで、そこだけ切り取られてしまうとまるで妻が夫を殺したかのように見えてしまうが、実際は長く続いてきた、そして続くはずだった夫婦関係のほんの一部分の切り抜きに過ぎない。そりゃ他人同士が暮らしているのだもの、良い時もあれば歪み合い怒鳴り合う事だってある。寄り添って欲しい時にもっと寄り添いあえていたら、きっと結果は違ってただろう。
世間や11歳の息子からも疑いの目を向けられながらも淡々と裁判で無罪を主張をする冷静な主人公も、あれだけ感情を剥き出しに出来た唯一の相手が夫だったのかもしれない。そう考えるとさらに切ないものがある。
久しぶりに自分のプライベートな状況を忘れて没入できた、面白い映画でした。
