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落下の解剖学のmorettiのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
めちゃおもしろかった〜
…と言いたいところだけど、サスペンスミステリージャンルかと思いきや、ど真ん中の夫婦倦怠映画で胃が痛い〜
…というのが正確な感想death!

第2幕の終盤の地獄の口論が本作の白眉のひとつでもあるんだけど、これ「マリッジ・ストーリー」でも観たな〜。でも全然作品のスタンスが違ってこちらは酷薄版「マリッジ・ストーリー」という趣き。
作り手の観察するかのような冷徹なまなざしに好奇心を鷲掴みにされましたことですよ。

途中から客観的な真実は?ではなくて、それぞれの登場人物の中のそれぞれの真実を炙り出していく作劇にシフトチェンジ、シナリオの多層的な巧みさと、体重乗りまくりの演技の応酬とで面白いことこの上ないんだけど、見せる/見せない、語る/語らないの塩梅で「この人はなにを考えているのか?」という映画の核心に絶妙の余白を残していて、そこがなんとも、ニクいところですよ。

本作ではひとつの婚姻関係の中に国籍や言語や経済や表現やジェンダーなんかをうまいこと感情の枷として落とし込んでいて、より感情的なほつれを玉虫色にみせていたと思います。画では見せることのできない心を描いたシナリオと演出は見事。

そんな中で、サンドラさんに対して最初から最後まであんまりいい印象持たないのは誰しも同じかと思うんですけど、その原因のひとつに彼女が母親としての偏差値が低いっぽいから、と思っている自分に気付いてあらヤダThis isジェンダーバイアス、と思わせるキャラクター造形の巧みさも際立っていたんじゃないですかね。

そして本作のドラマの本質的な部分で、特にわたしはこの夫婦の関係性が詳らかになるにつれて、婚姻関係におけるふたりの人生の削り合い、みたいな部分にイタタとなりましたし、サンドラさんや夫さんと同じようなネガティブな感情を抱いたこともあるようなないような…ひとりで観に行って正解death!

冒頭のボール落ちるショットとか、重要な音声の出し渋りとか、ミッドポイント以降にダニエルくんのパートを持ってくる構成とか、ちょっとね、ちょっと作為が描きたいことに対して悪目立ちしている気もしました。

フランスの裁判ってあんまり観たことないからやけに民主的でカジュアル(服装が特に)であることに感心したし、サンドラさんの弁護士がやけにイケメンで髪かきあげ〜にどきどきしたし、スヌープくんの卒倒演技どうなってんの?となったし、宣伝ビジュアルが「ウィンド・リバー」ぽいと思ったし、個人的には同業者のアイデア無断パクリの件でサンドラさんギルティと思っております。

そうそう、本作観ていて思い出したのがアンバー・ハードとジョニー・デップのの裁判であったことを追記しておきます。

アカデミー賞絡むからか満席の映画館で、人熱と映画の緊張感で脇汗じっとり、楽しみました。
久しぶりに新宿タイガーマスク先輩の姿も見かけて、ちょっと嬉しかったです。
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