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落下の解剖学のエニグマのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.9
雪山の山荘にて転落死した男性。容疑者はその妻、証人は視覚障がいを持つ息子。
予告の感じから一般的なミステリーを想定して観たわけだが、本作は「誰が犯人か」というミステリーの結末よりは「裁判における結末」に焦点を当てていた。父親が死ぬ瞬間は描写されないため観客も誰が犯人かは分からず、想像と事実が混じった主観的な証言、科学的知見、残されたボイスメモ、など不確かな物から事件を追うしかないのである。更に度々報道カメラなどからの映像が挿入されるため、より臨場感のある(ドキュメンタリーっぽさもある)作風だった。劇中では、「判断材料が足りない場合はどちらか2つから決めるしかない(うろ覚えのため意訳)」というセリフがあり、判決は裁判に参加した各々が選択した一種の結論でありそれが真実と=で結ばれるとは限らないという裁判の本質を表していたと思う。検察官側も適度なウザさで、裁判の攻防を観客も追体験できる作劇はとても良かった。言葉にどもる感じとか人の話遮っちゃう感じとか演技も妙にリアルだった。しかし、期待していたものとは違ったためやや消化不良に終わってしまった。
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