ナミモト

落下の解剖学のナミモトのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
小説家同士の夫婦。自宅内での夫の不審死。
疑われる妻。11歳の弱視の息子と、犬。

予告編では“事件もの”の印象をもっていましたが、本作は、ヨーロッパの多言語環境と、多言語環境におけるコミュニケーションの取り方やその不完全性の問題とも感じました。

妻は母国語がドイツ語、夫は母国語がフランス語、ふたりの共通言語は一応英語だけど、裁判はフランス語で進む…一種のバイリンガル・ムービー。
母国語同士であったとしても、夫婦間のコミュニケーションって時として難しいものなのに…。この夫婦の会話(喧嘩もふくめて)は、どちらにとっても母国語ではない言語で成り立っている…。いや、成り立たせるの難しいわけだからこうなってしまっているわけで…。
ずっと日本にいると、なかなか共感しづらい環境ではあります。陸続きのヨーロッパの大変さ…。

映画冒頭、階段から落ちるボールとそれを追いかける犬。警察車両の中を歩く犬を追う、犬目線まで下げた撮り方。
本作は、じつは結構、犬が重要です。

あと、夫婦の関係を逆にしたら成立するかなぁと想像していました。夫ではなくて妻が不審死していたら…。妻ではなくて夫が売れっ子作家になっていたら…。その場合だと、現実にありそうな事件の話と感じました(そして、SNSで炎上しそうな案件です) 。この感じが違和感ないと思えてしまうあたり、現実社会が男性中心的なんでしょうね…。
ナミモト

ナミモト