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落下の解剖学のsymaxのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8
"待って…私は殺してない"
"それは重要じゃないんだ…"


夫が死んだ…転落死だった。
しかし、警察は妻サンドラへ疑惑の目を向け、捜査を継続する…やがて、夫を殺害したとしてサンドラを起訴する事に…裁判の過程で明らかになる疑念…果たして、事故か、自殺か…それとも妻による殺人か…

カンヌ・パルムドールに輝き、オスカーでも作品賞の有力候補となっている本作品…流石の評判で平日なのに結構お客さん入ってます。

夫の死の真相を謎解くミステリーかと思っていましたが、全くもって違う…150分を越える上映時間の内、かなりの時間を使って法廷シーンがあるので、法廷サスペンスモノかと言えばそれも違う気がする。

つまりは"真実はどれか"ではなく、あなたは"どう思うか?"あるいは、"どう感じるか?"が主眼になっているような気がします。

サンドラは、完璧な善人ではなく、色々やらかしてる怪しい人物であることは確かではありますが、だからと言って一方的な推察で犯人とする検察側もどーかと?…人が人を裁く事の難しさと怖さをひしひしと感じさせる作品でもあります。

録音された口論の内容に本作の奥行きの深さを感じます。

この口論には妻の言い分も夫の言い分もどちらにも一理あるし、どちらも身勝手とも言えます。

妻が怪しいと捉える事も夫の絶望感も痛い程伝わる…この脚本の構成は見事の一言…そして、この素晴らしい脚本を凄まじい程の演技力で表現し、観客を魅了するザンドラ・ヒュラーの演技を劇場で鑑賞出来た事は幸せでした。

いや、凄い作品でしたね。
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