このレビューはネタバレを含みます
雪深いロッジ風の山荘、視覚障がいの息子、屋根裏部屋から転落死した夫、妻が犯人としか考えられない…。ミステリー好きとしてはこれほどの面白い設定はないで!「落下の解剖学」という題名からも、ロジカルな推理合戦なんかが見られると思ってた〜!
うーん…「ミステリー法廷劇」の体裁やし、様々な受賞をされてるから、期待しすぎたやん…。
「ある家族のヒューマンドラマ」としては見応えがあったけど…ミステリー好きは肩透かしにあうで。これから観られる方は気をつけてください。
以下はネタバレ…
はじめのインタビューの大音量の音楽の原因とか、なぜ夫の生前の様子をあまり見せないのか、いろいろ気になってた。この家族にはきっと強烈な「秘密」があるんやろうな、と思ってた。音を頼りにして生活している子どもがいるのにいつもあの大音量をかけてるのはおかしいもん。
裁判で、「前日の夫婦喧嘩の音源」が流れるシーンはとても面白かった!夫の気持ちや夫婦の問題がやっと明らかになる。息子の事故の責任や小説が書けないこと、成功した妻への嫉妬、妻が浮気したこと…夫はなんやかんやで精神的に参ってたんやね。「自分の時間が欲しい、家事の分担に不満」なんて、一昔前は女性のセリフ。その辺りのジェンダーの部分がパルムドールとかアカデミー賞ノミネートの理由なのか?
大喧嘩の修羅場の破壊音がそのまんまさらされるところは、傍聴している人たちと同じように口開けて「あーあ…」って言うてもうたわ。聞かされるダニエルのことを考えると心が痛い…。
ただ納得いかないのは、判決が出るシーンがないこと。無罪になったのはわかったけど、事故なのか、自殺なのか、はたまた他に犯人がいるのか…はっきりしてへんぞ。そのまんまダラダラと酒飲んでなかなか帰らないから、まだ何か隠してると思って見入ってた。あれ?このまま終わり?エンドロール最後まで期待して待ってたけど…なんもないんかい!あの後、母としてダニエルと今まで通り暮らせるか?ダニエルは母を信頼できるか?
どうせなら、数年後にこの事件を小説にして、夫との共著で発表して、真実を明らかにしてベストセラーになる!くらいのオチを見たかったなぁ。夫は望んでないかもしれへんけど。