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落下の解剖学のharuのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

息子が選んだ「事実」。

人気作家サンドラの夫が、自宅で転落死。その後の調べで他殺の可能性が生まれ、サンドラに容疑がかかる。裁判で夫婦の実態が明かされていく中、ついに第一発見者の息子が証言する。

事件の真相に迫るというより、事件によって明かされる夫婦の実態を描く、フランスらしいモヤモヤサスペンス。とりあえず国際結婚は大変ですねという話。
冒頭サンドラが取材を受けているシーンから始まり、ここでサンドラがなぜか話題を頑なに逸らそうとしたり、夫が爆音で音楽かけたりと、妙な空気感。その後夫が亡くなり、裁判となりますが、決定的な証拠がないまま、次々と夫妻のプライバシーが暴かれていく。「家事の負担が大きく不満を持っていた夫」、「過去に不倫していた妻」、「息子の事故に責任を感じて精神科に通っていた夫」、「そんな夫を責めた妻」など、事件がなければ外に漏れることもなかったであろうネタが続々と投下され、サンドラはふっかり「悪い嫁」に。そして同時に、彼らの一人息子がどんどん傷ついていく。
トドメの一撃が「前日に二人が夫婦喧嘩をしていた」ということで、二人の激しい戦いが音声で流されるのですが、こちら誰に感情移入するかによって解釈が変わるのが面白いです。私はむしろここでサンドラ悪くなくね?って思っちゃったんですが、夫が気の毒と感じる人もいて、結局これを聞いたところで何かがわかるわけでもない。しかし彼らの息子は、裁判をすべて傍聴した上で「事実」を選択。大人だなぁ。
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