TS

落下の解剖学のTSのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.0
【真実でないことが真実となる事実】70点
ーーーーーーーーーーーーーー
監督:ジュスティーヌ・トリエ
製作国:フランス
ジャンル:ドラマ
収録時間:152分
ーーーーーーーーーーーーーー
 2024年劇場鑑賞8本目。
 2023年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞している今作。僕も映画はまだまだ中級者なので、恥ずかしながらカンヌで評価されたものを絶賛できる能力、感性を持ち合わせていません。今作は恐らく秀作なのですが、個人的には思っていたより微妙だったなと思いました。確かに後からネットなどで考察などをいろいろ読ませていただいて、納得する部分もありましたが、とりあえずはこれくらいの点数にしておきます。

 簡単にいうと、3階から転落した一家の主が死亡してしまいます。ただ、その転落した現場を見ていた者はいなく、事故なのか、自死なのか、はたまた殺人なのかわかりません。この時家にいたのは妻のサンドラだけであり、当然ながら容疑をかけられます。そこからの法廷劇が延々と続き、満を持して今作は150分もあります。これが個人的には結構きつかったです。考える時間、つまり余白を意図的に監督がとっているならば仕方ないのですが、やはり自分はどちらかというとテンポ良く進んでほしいタイプなので、これは少しきつかったです。

 もちろん、余白を必要とする映画もありますし、状況によってはそうしてほしいものもあるのですが、今作は最後まで真相がよくわからないのです。そのモヤモヤした中で、あらゆるヒントを思い出しながら見ていかないといけませんから、上級者向けの映画であると言えましょう。となると、情けながら僕には少し厳しい映画でして、まあこれくらいの点数かな、となってしまいました。

 結局のところ、真実でないことが真実になり得ることがあるということ、が認識できて興味深かったです。無論、サンドラは犯行していないというのですが、最後の最後まで自分が不利になりえてしまうことは伏せます。別にそれが犯行をしたという証拠にはなり得ないのですが、不利になってしまうことは確か。法廷は所詮、ルールはあれど人の感性で進めている空間ですので、言わないに越したことはありません。しかし、それが明るみに出たらタイミングの問題もあり、それが真実となっていくのです。このあたりは成程、と思わされました。

 犯人が誰かなのかの真相はともかく、あらゆるヒントを拾いつつ、こういう展開もあるのだなと納得しながら鑑賞できる方は、今作を高評価するでしょう。肝心の落下のシーンは冒頭10分以内に発生するので、そのあと2時間以上はほぼ会話劇です。眠たくない時に興味のある方はぜひ。。それにしても、やはりパルムドールは一筋縄ではいきませんね。。
TS

TS