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落下の解剖学のMonisanのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.9
観た。

評判が良さそうだったので。何も情報を入れずに観た。

客観的で淡々と事実だけを、観ている我々も知っていく事になる展開はドキュメンタリーのようでもある。
なので興味は途切れる事なく、152分も長さを感じなかった。

脚本がすごいのかな。
街から遠く離れた山にある一軒家で起きた夫の転落死。自殺か他殺か、事故なのか。
現場に付近に居合わせているのは妻と、視力を事故で失っている11歳の息子と犬のスヌープのみ。設定が良い。

妻が被疑者として起訴され、裁判となるけれど具体的な証拠はなく、血痕の分析と証言と、後は小説家でもある妻の小説の内容と夫婦喧嘩の録音データのみ。
裁判の様子は検察が少し強引に妻を有罪に持っていっているかのような演出に感じるが、明らかに妻もおかしいと徐々に感じてくる。ずっと傍聴している息子が偲びない。

夫婦喧嘩のシーンはリアルだなぁ。立場が違うからどちらの言い分も分からないではない。夫の精神科医は妻の事を悪く言っている夫の話をするし、妻からしたらフランスの山の上に越したのは彼の希望でもあるし。

息子の保護的な役割で裁判所から派遣されて付き添っていた彼女が、息子の最後の証言の前に「異なる2つの意見があるとしたら、どちらかに決めなきゃいけないの」的な事を伝えていた。
賢そうな息子くんには、その事が響いたのかな。スヌープのご飯にアスピリンを入れた検証の話と、最後に一言付け加えていたし。

結果的に、妻は家に戻り犬が寄り添い、終わる。観ているこちらとしては何か釈然としない雰囲気を味わう。その答えは描かれない。
息子くんも決して答えは分からないだろうけど、彼なりにどちらかに決めて証言台に立ったのかな。
スヌープ(ドッグ)の演技が素晴らしい。

ジュスティーヌ・トリエ、脚本・監督

※祝!アカデミー脚本賞!
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