ひでG

落下の解剖学のひでGのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
評価が分かれてますね。ここ数年のパルムドールは、好き嫌いがはっきりする作品が多いですね〜

映画鑑賞というより、自分も裁判員か陪審員で裁判に参加しているような体験でした。

嫌いではないし、緊張感を保ったまま観れたので充実はしていましたが、ずっと画面に映る主人公サンドラの表情や言葉を見逃さないぞっと凝視していたので、とても疲れる152分でした。

法廷でのシーンが続きますが、なかなか決定的な証拠は出てきません。
第一発見者の目の不自由な息子のダニエルも確信的な証言は得られません。

サンドラの元彼?の弁護士は言います。
「君がやったかどうかは問題じゃない。君がどう思われるかだ。」と。

中盤まで亡くなった夫は回想などで殆ど出てきません。
ただ、冒頭のあの大音量。きっと夫はサンドラにかなりの憎しみを持っているのだろうと想像がつきます。

また、あの家なんですが、綺麗なんですが、どこか生活感がなく、完成していないモデルハウスのような建物です。
この夫婦はどんな生活をしているんだろうか、
私たち観客も霧の中に真相を探す裁き人のような心境が続きます。

そんな思いの後半、裁判も、映画も一気に霧を振り払うような証言が出てきます。

そこで暴かれるのは、夫婦の本当の姿、
悍ましいほどの対立、エゴのぶつけ合いと
相手への不信の数々。

これを聞かされている息子ダニエルの心境を思うと、もう裁判の結果なんてどうでもよくなってきます。

ダニエルは言います。「もう傷付けられています。」と。

肝心の部分は観客に見せず、知らせずに、
結審します。
さらに、その先には、、

全てを知ってしまったダニエルの土壇場の
「生きる力」を得ることになります。

裁判前の親子関係には決して戻れません。
あの雪山のログハウスは完成を見ないまま
家族が揃うことはもうありません。

何とも哀れな、踏ん切りのつかない気分でエンドロールを見つめていました。

嫌いではありませんが、終始近付けない作品でもありました。
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