水饅頭こわい

落下の解剖学の水饅頭こわいのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.1
タイトルとポスターのデザインに惹かれて見に行った。
正にタイトル「落下の解剖学」とおりの内容でしたし、ザ・ヨーロッパ映画的だなとも思った。
映画は本当に落下死を学問のように少しずつ解明しよう進んで行く。

三階の小窓から落下死した夫、愛犬との散歩帰りの第一発見者?の視覚障害の息子、二階に居た容疑者の妻と濃厚なミステリィ要素である。現場も小高く雪深い山荘である。そして法廷ミステリィとして進んで行く。
状況証拠は明らかに妻の犯罪に見える。実際その様に裁判は進む。

暴かれていく家族の実態。
ドイツ人の妻とフランス人の夫がイギリスで出会って結婚、しかし子供の事故で金銭的に苦しくなり、夫の地元のフランスの山奥に暮らし始める。夫は子供への罪悪感と作家としての自信の無さ、妻は見知らぬ土地での孤独感とストレスを抱えている状態。更にそれに挟まれる視覚障害の息子。


夫婦の喧嘩の録音や夫の精神科医の証言などにより、妻の犯行かのように。
この時点でミステリィ好きの私から妻犯人説は除外される。勝手に第三者説に移行する。

弁護側の自殺の人形による検証で自殺及び事故の可能性も大いにあることが分かる。
ほぼ妻が圧倒的不利に一年近く裁判は続くが、凶器を始め物的証拠が無く自殺説も否定出来ない状況となっている。
それを裁判シーンの演技は情熱的だが淡々と描いている。
各々の主観的証言も含めて淡々と事実を並べていくだけ。
まるで解剖してるように。
白黒が分からないし、つけることの出来ない息子の最後の証言は己の今後を考えての発言か否か。

妻が疲れてソファで横になると犬が添い寝して来るシーンで終わる。それが真相なのか?

後で知ったが、カンヌなどで作品賞や脚本賞を多く受賞してたんだね。
ネタバレとかあまり関係の無い映画でした。良くも悪くもヨーロッパ映画でしたね。