門田睦

落下の解剖学の門田睦のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.6
有罪か無罪か。
これはあまり重要でなくて。

子を持つ、夫婦の崩壊。
真実とは一種の距離感がある"法廷"の上で描いたのも秀逸。息子の事故、エゴ、才能、プライド、愛。そーゆーもののバランスが崩れていく話。

夫婦喧嘩のシーン。平等を求めて口論になるけど、それをつぶさに口にしてしまったら終わりだと思った。愛ゆえの協力関係によって、自然と平等になるのが理想。それが利害による平等を求め始めたら終わりだなと。パンフに、二人は口論を通して交渉し〜お互い深く愛していることを象徴している。ってあったけど、"交渉"って愛じゃなく利害による関係で発生する気がする。

画的には、冒頭狭い画がほとんどで息苦しく(良い意味)、その後も効果的に狭い画が使われていく。一方で広い画になる際は、妙な余白が多分に含まれていたように思える。この2つの画が緊張感リズムを作り出していて、息苦しい(良い意味)。
犬に薬を飲ませた一連のシーンは、息苦しいどころか息が上がってしまった。

サンドラと視聴者の距離感の生み出し方が凄まじい。それは演出によるもの(多言語、仕事の設定)もあるけど、演技によるものも多分にある。ザンドラヒュラーやべぇ。
ダニエルの成長劇としても良い。もう傷ついているから、話を聞きたい。と立ち向かいながらも、苦しい局面が幾度となくある。それでも、自分が嘘?をついてでも両親の真実を引き出そうとする様は感涙。ダニエルは父との記憶?という主観的事実を選ぶ。自ら心のピリオドを打ち、それが裁判を決めることにもなる。そして最後、抱き合うシーンでダニエルの方が母を包みこむように見える。
見てる最中はここまで理解が追いつかなかったので、もう一度見たら涙涙だなぁ。ダニエル成長すげぇや。
門田睦

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