CheshireCatYK

落下の解剖学のCheshireCatYKのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8
いやー濃厚な群像劇!!!
ラジオで「やさしそうに見えるお母さんが、だんだん夫を殺してるんじゃないかみたいに見えてくる」って紹介されてたけど、私的には不穏な顔立ちの俳優さんだと終始思った(ごめんなさい)

しかし…髪型のせいもあると思うが、アダムドライバー幼少期って感じの息子くんが終始かわいすぎる…🥺

ネットで犬役のMessiという犬が大絶賛されてmeme化してるけど笑、まじでイッヌすごかったwwwww なんなら目が夫に似ていたからそれでキャスティングされたのでは?とか思っちゃった。スヌープという名前も最高w SNOOP DOGww

ケンカのシーンは、我々昭和から平成から令和の遅れた日本の価値観を持ち合わせる者からすると「あれ?男女逆転?」と思ってしまう(←これ自体残念な考えなのだが)ような、「普段なら奥さん側から出てきそうな不満」が夫から繰り出されることに、この作品の強い意図を感じた。

最初の音楽大音量シーンからの「落下した人」として描かれる冒頭ではミステリアスな顔なき存在である夫が、だんだん色んな事実や「声」により人間性を帯びてくる描き方もおもしろかった。

以下ネタバレ

最後の証言に立つ前の葛藤の週末を描くシーン、そして証言台での息子役の演技が本当に素晴らしい。最後の車でのお父さんの思い出の話が裁判の決定打となったような描かれ方をしていたけど、なんとなくあれは、作家2人の血を引く彼の、美しき創作であったと私は感じた。だから、判決の日の夜、飲んで帰ってきた母(ってか1杯飲むくらいならいいけど、まじで早く帰れよと思ったし、TVのインタビューで"早く息子に会いたい"って発言しながら遅く帰るあそこで、あの母の人間性が真に問われたように思う)に"帰ってくるのが怖かった"と、見ている我々には「????」となる反応と、何もかも知る母がその発言に驚きもしないどころか、同意するのを聞いて妙に腑に落ちた。

でも、犬は悪人に寄り添わないので(決定事項。笑)、やっぱりやってないかな……

でも、地味な題材と地味な舞台、ほぼずっとセリフしゃべってる裁判モノでこんな重厚な2時間半(長いよね!)、全く飽きさせないのは、さすがのカンヌだなと思った。

検察の発言だったかな、夫の尊厳が先に死んだのだ、というセリフ。本当にそれだなと思った。それは夫婦関係の終焉のはじまりでもあったと思うし、自殺であれ他殺であれ、夫の死の始まりはそこ(彼がおそらく本来は自分で誇りとしたかった作家としてのプライドが傷ついたこと)であったようにも思う。生きる目的や自分が目指すものが、命と同じくらい大切な人もいる。特に創造・創作を仕事にする者は。そして、自分にとってすごく重要な話し合いを「そんなの取るに足らないトピックであり、時間の無駄だ」と一蹴される虚しさたるや。あのシーンでは本当に夫に同情してしまって、殺したかどうかは置いといて、なんて夫の気持ちに無関心なんだ!と思ってしまったし、かたや自分で決めて山に住んでるのに、自分の時間なのに、パートナーのせいにする夫にイラつく気持ちも分かって、すごいケンカシーンであった。。