Ken

落下の解剖学のKenのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「落下の解剖学」

"裁判の目的は自己検閲をせず真実を明らかにすること"

"彼を追い詰めたのは夫婦喧嘩ではなく、挫折感。
彼女が罪を犯したと言うならば妻だけが成功したこと。"

"何を信じればいいのかわからないよ"

"負けたら最悪だけど、勝っても何もない。もっと見返りがあると思ってた"


夫の落下死からこれだけの展開ができるのかという驚きと、勝訴なのにモヤモヤしているサンドラやダニエルに似たモヤモヤした感情が最終的に残る映画だった。


証拠なしで、想像ばかりが飛び交う法廷がとても印象的だった。
さっきまで想像を語っていた検事側が弁護側の答弁で証拠を求めたり...(逆もまた然り)
いくつかの事実から溢れてくる想像を事実のように話している場面が多かった。
作中、ダニエルが証言台で口にした"真実がわからないから状況から考えるしかない"というセリフが妙に重く感じた。
被害者が亡くなってて証拠も不十分なため、状況から考えるしかなく、想像を否定して想像を話す検事側と弁護側を観ていて不毛な争いのようにも感じた。
この映画は隠された真実が明かされるような謎解き映画じゃないとだけ言える。
白か黒かではなくそんな曖昧が世の中には溢れているのだと思った。


夫の落下から始まる全ての落下。
夫が落下をして、裁判が始まり、妻であるサンドラが疑われ、息子のダニエルに対する両親の想いが裁判で明らかになったり、誰にとっても幸せではなくただひたすらに落下していく内容だった。
最終的にサンドラが勝訴したが、そこには何もなかった。
結局夫の死因が他殺なのか自殺なのかは明らかにならなかったが、そこをはっきりさせないことで観客にもモヤモヤを残す結末となっていた。



○まとめ
正直この映画の意図を汲み取れてる気はしない。でも、裁判での検事のなんとしても有罪にしてやるという執念や、弁護側の被告人をなんとしても守ろうとする答弁など、非日常的でリアリティなシーンは観ていて楽しかった。
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