のーのー

落下の解剖学ののーのーのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

白か黒か一つの真相を決めつけてしまうのも安易だけれど、真相は誰にもわからないという結論を出すのもまたある意味安心できる着地点であって、この映画はその“落としどころ”をさらに突き抜けて、能動的な「事実」の選択を主要人物に迫る。しかしそうして選び取った事実はやはり一面的であり、現実はなお混沌としていて…という、無限に“落下”を続けるような話にめまいがする。
「よくわからない」という落とし所のままで生きていけたほうが誰にとっても楽な気がするけど、真実を求めたがる人間の性がある以上そうもいかないものなのかなあ…と思った。特に最近、振る舞いと感情の因果関係のような曖昧な物事に対してもネット上で誰もが声高に白黒のジャッジを下す風潮に違和感や恐怖を覚える自分にとっては、しんどい話だなと感じた。一人ひとりが自分なりの事実を信じるということと、絶対的なものとして一つの事実を世間に主張するのは真逆の事だと思うんだけど、原理的に不可分でもあって、その差がSNSの力でどんどん曖昧になってる気がする。せめて自分は、受け入れがたい見解を目にしても、正しさを押し付けられていると感じるんじゃなくて、その人の主観的な事実を言っているに過ぎないんだという意識を持っていた方が楽かなと思った。(これ映画の感想になってるか?多分なってるな。)
犬が犬デミー賞受賞だけあって名優だった。
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