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落下の解剖学のボーのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

 真相はどちらともとれる! 確かに妻は殺人をしたにしては不用心で、無防備に見えるし、個人的には自殺だったのではないかと思う。しかし夫が子供に零した言葉は、妻の殺意を察知した上でのものともとれる。
 二つ可能性があって、どちらも確からしく思えるとき、一つ選ばねばならない。子供はこれ以上親を失わない選択をしたのだろう。

 まず目につくのは、いわゆる典型的な夫婦間の男女勾配が逆になっているように見えたところ。しかし男女を逆にすると、亡者の無念を晴らそうと必死な検察が嫌な攻撃性を持っているように見えてしまう。これが妻の無念を晴らす女性検事なら、同じ激しさでも自分は好意的に見たかもしれない。
 また、妻がモラハラ気質であること、自分が悪いと思っていないこと、よって彼らを愛しているが行動として慈しんでいるかは疑問が残る描写の塩梅に唸らされた。際立って感じられたのは終盤。妻は勝訴の際、子供に今日帰ってきて欲しいと言われて嬉しそうな様子だが、打ち上げに最後まで参加している。その間子供はずっとソファで母の帰りを待っている。母の帰りは子供が起きている時間に間に合わない。
 どうしても想像してしまう。父であれば一も二もなく帰っていたのではないか?

 以下は全くの夢想で、制作陣が意図しないだろう妄言なんだが、作中の映像や子供のピアノ演奏を撮っていたのが亡き夫であったなら……と想像した。もちろん、TV局のカメラや警察が撮る画角もあるので、この妄想は全く妄想でしかない。しかし、生前の彼が無断で会話やピアノ演奏を録音していたことを踏まえ、冒頭のたどたどしい演奏からEDの演奏を聴くと、頻繁にでてきた隠し撮りのような画角に意味を見出して勝手に星座を結んでしまう。
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