CatValentine

落下の解剖学のCatValentineのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
真実はひとつでエゴは人の数

盲目の息子が事件の唯一の証人という脚本賞もを惹き付ける素材だったが、どうも良さを活かしきれてない
確かに裁判や事件の検証シーンでは此方を入り込ませ、それぞれの場面でただ映画を観ている観客を当事者にしていた。その引き込ませ方は純粋に見事だった。

この作品は素材以外にも何が魅力かと言えば、人間のエゴと状況の生々しさを凄く自然に創り出していることだ。
特に夫婦間で言い合いは、互いのエゴのぶつかり合いやセクシュアルな話題が、法廷の証言として息子に降り注ぐ。
子を持つ親は子を不幸にしてはいけない、と強く考えさせられる。ダニエルはこの裁判を通して成長したのでは無い、エゴイストな両親たちがいかに無様かを知ってしまっただけだ。

そして2時間半かけてあのラストに終わるのは物足りない
事実は当事者だけが知っているといった想像に任せたラストをこの作品には期待していなかったからだろう。面白く、興味を惹く題材だったからこそ、何となくでもお父さんの死因を示す描写が欲しかった
しかし、ラストを推測するのがひとつの楽しみ方だとするなら、ダニエルが薬の時と同様に何か悪い思い切りをしてしまったのではないだろうか
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