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落下の解剖学のyutaのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
アカデミー脚本賞を獲得しただけあって、緻密な脚本だった。
事件の真犯人を巡って争う弁護側と検察側の主張を、視聴者の我々は裁判の傍聴者として一緒に考えていくことのできる体感型の法廷劇で素晴らしい映画体験があった。
本物の法廷がどうかは知らないが、少なくとも今作における法廷は真実を明らかにする場ではなく、事実と事実を繋げ合わせて如何に真実らしい主張ができるかで有罪無罪を決めるゲームのように感じた。どんな物事でもどのようにバイアスをかけて論を展開するかによって容易に見えてくる内容は変わるし、見たいものだけを見て事実を取り上げればそれもまた一つの説になってしまうと思ったり。
検察の姿勢が個人的には気に入らず、自分の聞きたい単語を言わせようと執拗に踏み込んで質問攻めみたいなやり方はかなり胸糞。
裁判は一応決着するが、グレーな雰囲気は最後まで残り、裁判によって何を失い、再起が難しくなってしまったのかを演出してるようで好き。
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