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落下の解剖学のKのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

29/2/2024 thr シネマイクスピアリ スクリーン15 F9 17:00〜
左右黒帯ビスタ。上手寄りどセンターいつもの席。


/落下の解剖学アナトミーオブアフォール、関心領域ゾーンオブインタレスト、邦題英題とも今年度の声に出して読みたい気持ち良すぎタイトル二作。


/まだ隠された事実が眠っているんじゃないか、と観客すら傍聴席の一人の聴衆としてその世界に完全に身を置くことになる、えげつない体力を使う2時間半だった。ほぼ会話で進むため中盤は眠かったが、展開がもうしっかりおもしれ〜! 妻と夫だけでなく、息子や犬すらも疑わしく見えてくる。まだ見えてないことがある。落下するほどの高さに見える部分だけでなく、地下へ潜らなければならないほどの事実が。

/息子の証言を控えていることが明らかになるターム以降でまたひと展開あるのがマジでシビレた。休廷の週末も一人で過ごしたいと彼は言い、犬にアスピリンを飲ませるという不可解な行動に出る。そうだよなあ、子供が知るべきでない親だけで共有してきたつらい事実もあるわけで、でも彼が状況や家族環境から推理して導き出す強力な結論も正しいわけで。地球上のすべての子、せめて苦しまずに生きろ。。。息子が屋根裏の三角窓に向かうシーケンスが特にヤバすぎて背骨がゾゾっと凍えた。
(しかし、障害を持つ人間をプロットツイストに使う映画が増えてきているのも多少考えものだ。マジョリティの便利な道具ではない。)
息子が弾く曲はショパンで統一されてるんだな。この作品のひんやりとした質感にとても合っている。

夫婦喧嘩だけでなく、セックスレスが原因の不倫の話、世間体を常に良く保たなければならない移民の苦悩、小説の案を産み出す著作者のプライドの話、と表面を上滑りせず全ての要素を掘り下げ渾然一体と事実へ向かっていくのが気持ちよくもあり恐ろしくもあり。

/無駄がない硬質な演出だが、シンプル故に上映時間中ずっとかなり雄弁だった。覗き見るようなカメラ、内面にまだ事実を隠し持っていそうな人物の表情のクローズアップ、そして極め付けは、自死を匂わせる父親の、犬の死に重ねた言動の完璧なボイスオーバー。息子だけがその言葉で語る、聴く、感じる真実。

/妻と弁護士が過去に関係があったであろうことを匂わせるカット最後に入れるのエグいな〜笑 インターネットでは彼のことhot lawyerって言われてるの知って笑ってしまった。

/50セントってつい"ごじゅっセント"って読んじゃわない?

/ザンドラヒュラーがそら良い。表情こそそんなに変わらないんだけど、容疑と無実どちらも力強く想わせる、被疑者として完璧な演技バランス。俳優としてこの質の作品に出られたならもう悔いないでしょうよ。

/人間やそれにまつわる物事を多面的に見ること、体力がある限り気力がある限りやめたくねーな!て思う話だった。



って一連書いたけど、正直、"そんなに絶賛するほど面白かったか?他にも面白い外国語作品が掘れば五万とあったと思うけど、所詮アカデミーが大好きな「英語を使った外国語作品」に過ぎないよな"、という気持ちも大いにある。体制は何も変わっちゃいないよ。
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