蛇らい

落下の解剖学の蛇らいのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.2
人が人を裁くという行為について、現代的な解釈を織り込み、容赦ない法廷劇で畳み掛ける。親と子の相入れなさが裁判という社会の枠組みの中で浮かび上がる。しかし、難ありな作品でもある。

明らかに子がとてつもなくしんどい思いをしていながら、この映画は子どもへも寄りそわないし、弱視という設定だからなり得るであろう真実を捉えるというナラティブはない。子どもを巻き込んで展開をドライブさせるだけさせて、その後に機能するのは不確定な本人の証言だけであるということにも肩透かしを食らった。

裁判における証言と実際に確定している事実だけで、後は観客の想像に委ねられる。それでは、現実で起きた事件などの裁判から人々が想像する真実の領域を脱しないと思う。映画だからこそ提示できる、写ってしまった瞬間があってこそ固執した可能性への想像を壊し、物事が多面的であることの驚きを得られるのではないか。

カメラマンの存在、物語をコントロールしているように感じるカメラワークでありながら、提示されるものが少ないのは問題だと思う。どうにでも捉えられる終わり方をする作品は多々あるが、ラストまでに経過するシーンの数々から受け取れるものがあまりにも平凡過ぎる。
蛇らい

蛇らい